目次
かかりつけ薬剤師とは
かかりつけ薬剤師とは、投薬治療や健康・介護に関する豊富な知識・経験を持ち、患者さんのニーズに沿った相談に対応できる薬剤師です。
超高齢化社会となった日本では、高齢者の健康管理が課題となっています。患者さんが薬の効果を十分に得るためには、正しい方法で服用してもらうことが不可欠です。
また、医薬分業によって、薬の効果や副作用の確認、処方時の薬の重複や飲み合わせの悪い薬の確認も求められています。
このような背景から、かかりつけ薬剤師は患者さんにとって身近な相談役として、健康をサポートするために必要とされています。
かかりつけ薬剤師の役割・求められる機能とは?
かかりつけ薬剤師は、単に医師の処方箋に基づいて調剤するだけでなく、患者さんが服用している薬やサプリメントなどの情報も把握する必要があります。
そのうえで、患者さんの薬の管理を適切に行い、必要に応じて医師による処方の減少や、薬の変更の提案をすることが重要です。患者さんに対して適切なサポートを提供するためには、全ての薬局がかかりつけ機能を持つことが理想です。
また、ICTを活用した服薬情報の一元的・継続的な把握や医療機関との連携、主体的な健康の維持・増進支援などが求められています。
これからかかりつけ薬剤師を目指す方は、以下の役割・機能を知っておきましょう。
患者さん1人に対して1人の薬剤師が対応する
かかりつけ薬剤師は、1人の患者さんに対し1か所の保険薬局における1人の保険薬剤師が担当します。そのため、担当する薬剤師は、患者さんがこれまで利用した医療機関の服薬情報を的確に把握しなければなりません。
とくに患者さんが他の薬局ですでにかかりつけ薬剤師に対応してもらっているかを確認しておきましょう。
そのうえで重複投薬や多剤の有無、副作用の発現や相互作用の防止などを踏まえ、薬学的な正しい管理や指導を行う必要があります。
24時間体制で対応する
かかりつけ薬剤師は、薬局が閉まっている休日や夜間帯を含め、24時間体制です。患者さんの薬の副作用や突発的な体調変化、服用のタイミングや飲み間違いといった事柄に関して電話などで相談を受けることがあります。このような場合、患者さんの状態を正確に把握し、適切なアドバイスを行うことが必要です。
医療機関や多(他)職種と連携する
かかりつけ薬剤師は担当する患者さんの薬の服用に関して、服用前から服用後までの情報を管理しなければなりません。処方内容を踏まえ、服用後に患者さんから得た情報を医療機関・多(他)職種にフィードバックし、必要に応じて処方医に相談することもあります。
また、患者さんの健康状態を把握したうえで、他の医療機関への受診を促すことも求められます。そのため、薬の知識を深めるだけでなく、患者さんの健康面を適切にサポートするための体制を整えておくことも重要です。
かかりつけ薬剤師指導料
かかりつけ薬剤師指導料において、2025年度に押さえるべきポイントは、以下の通りです。
点数
かかりつけ薬剤師指導料は、76点です。
算定要件
かかりつけ薬剤師指導料の算定要件は以下の通りです。
施設基準
施設基準としては、主に以下の6つが求められます。
- 保険薬剤師として薬局勤務経験が継続して3年以上であること
- 薬剤師認定制度認証機構が認証している研修認定制度などの研修認定を取得していること
- 医療に係る地域活動の取り組みに参画していること
- 週32時間以上、薬局で勤務していること(育児・介護などで時短勤務を行う薬剤師の場合、週24時間以上かつ週4日以上)
- 当該保険薬局に1年以上勤務していること(1年を上限として保険薬剤師としての勤務経験の期間に含められる)
- 患者のプライバシー保護のためのパーテーションなどの仕切りを設置していること
薬局内での服薬指導や、患者さんとの会話の際には、やり取りが他の方に聞こえないようパーテーションなどで区切られたカウンターを設置し、プライバシーに配慮しなければなりません。
また、注意すべき点として、保険薬剤師の在籍・勤務期間に関しては、届出時における直近の連続した在籍・勤務時間が必要であることを知っておきましょう。
たとえば、産休や育休、何らかの事情で退職して再雇用となった場合は、復帰する以前の在籍期間を計算に含められません。仕事を長期で休む場合は、上記の内容を把握しておいてください。
算定対象となる患者
算定対象となる患者さんは、当該薬局に複数回来局している方です。同意書にて患者さんの同意を得たあと、次回の処方箋の受付時から算定できます。
患者さんの同意を得る際は、以下の内容を説明することが必要です。
- かかりつけ薬剤師の業務内容
- かかりつけ指導料の費用
- かかりつけ薬剤師を持つことの意義・役割など
- かかりつけ薬剤師指導料を算定する薬剤師が、当該患者がかかりつけ薬剤師を必要と判断した理由
2018年4月1日より前に取得した同意は、上記の要件に関係なく効力を発揮しますが、患者さん自身が同意の取り消しを申し出た場合は無効になります。
かかりつけ薬剤師の同意を得るには、こちらの様式例を活用するのも良いでしょう。
(別紙様式2)かかりつけ薬剤師指導料(かかりつけ薬剤師包括管理料)について(厚生労働省)
算定条件
かかりつけ薬剤師指導料の算定条件は、以下の通りです。
服薬指導や処方医との連携
患者さんに服薬指導する際は、患者さんが理解できるよう丁寧に説明をすることが不可欠です。服薬指導にはICTを活用したオンラインでも対応しています。オンライン服薬指導システムなどを活用することで、薬剤師・患者さんともに効率的にコミュニケーションが取れるようになるでしょう。
また、患者さんの意向を踏まえたうえで、服薬指導の内容をお薬手帳へ記載します。記載すべき内容は、患者さんの全ての保険医療機関の処方薬や要指導医薬品、一般用医薬品や健康食品などです。
患者さんの同意が得られた場合は、必要に応じて血液・生化学検査結果を参考として薬学的管理・指導を行う必要があります。
調剤後も定期的に患者さんのフォローアップを行い、その内容について薬剤を処方した医師に情報提供し、必要に応じて処方提案しなければなりません。
また、電話や患者さんの自宅への訪問、患者さんの来局時に得られた薬剤に関する重要な情報は、患者さんに提供することが求められています。
かかりつけ薬剤師指導料を算定する患者さん以外への服薬指導や、地域住民からの要指導医薬品などの使用に関する相談・健康の維持増進に関する相談に対しても、丁寧に対応する必要があります。必要に応じて保険医療機関へ受診を促すことも大切です。
かかりつけ薬剤師の情報開示
他の保険薬局や保険医療機関でも、かかりつけ薬剤師・薬局の情報を確認できるよう、患者さんが保有する手帳などにかかりつけ薬剤師の氏名、勤務先の保険薬局の名称・連絡先を記載することが必要です。
24時間対応や在宅への対応
休日や夜間帯における患者さんからの相談に応じる体制を取り、開局時間外の連絡先を伝えておくことが求められます。
やむを得ない理由で患者さんからの電話などによる問い合わせに対応できなかった場合は、速やかに折り返し連絡ができる体制を整えておくことも必要です。
当該保険薬局以外の場所で応対する場合、必要に応じて薬剤の服用歴などが閲覧できる環境が整備されていることが望ましいでしょう。
かかりつけ薬剤師が不在時、または時短勤務の時の対応
原則としてかかりつけ薬剤師が相談に乗ることとされています。しかし、2024年の調剤報酬改定により薬局単位で柔軟な対応ができるようになったため、当該保険薬局のかかりつけ薬剤師以外の方が応対しても問題ありません。
ただし、かかりつけ薬剤師以外の薬剤師が処方箋の受付による服薬指導を行なった場合、かかりつけ薬剤師指導料は算定できません(一定の要件を満たす場合は、服薬管理指導料の特例を算定できます)。
育児や介護などで時短勤務を行う薬剤師がかかりつけ薬剤師指導料を算定する場合は、患者さんの同意を得る際に、勤務時間が通常より短い旨を説明する必要があります。
かかりつけ薬剤師の今後の展望
2015年に厚生労働省が発表した「患者のための薬局ビジョン」において、薬局の役割や機能が見直され、かかりつけ薬剤師の存在が広まっていきました。
2020年の調剤報酬改定では、かかりつけ薬剤師指導料が73点から76点になり、かかりつけ薬剤師包括管理料は281点から291点へと変更されました。
また、地域におけるかかりつけ薬局を評価する地域支援体制加算では、かかりつけ薬剤師の実績が考慮されるようになり、薬剤師の活躍の場が広がっています。
地域支援体制加算1・2において「かかりつけ薬剤師指導料」の届出は必須です。また、加算2では9つの選択要件のうち3つ以上を満たす必要があり、その中に処方箋受付1万回当たり40回以上の「かかりつけ薬剤師指導料」の算定実績が含まれています。さらに加算3では、その算定実績が必要です。
超高齢化社会を迎えた2025年現在、医療費と介護費は今後も膨らみ続けていくでしょう。
さらに2035年には、団塊の世代が85歳以上となり、要介護高齢者の増加が見込まれます。これにより、地域の医療機関や在宅医療の需要が高まり、かかりつけ医やかかりつけ薬剤師の役割が一層重要になると考えられます。
日常生活の全般でかかりつけ薬剤師が存在し、かかりつけ機能が十分に発揮できる体制が期待されています。そのため、今後ますますICTを活用したオンライン服薬指導や多(他)職種間でのタスクシェアなどが進んでいくでしょう。
さらに、かかりつけ薬剤師の役割が広がり、セルフメディケーションや予防医療といった領域にまで活躍の場が広がっていくことが予想されています。
まとめ
かかりつけ薬剤師とは、投薬治療や健康・介護に関する豊富な知識・経験を持ち、患者さんの相談に対して柔軟に対応できる薬剤師です。
超高齢化社会の日本では、高齢者の健康管理が課題となっており、かかりつけ薬剤師の存在が求められています。
患者さんが安心して薬を服用し、治療ができるようサポートするためには、適切な薬の説明や処方などが必要です。かかりつけ薬剤師指導料の算定要件・算定条件を踏まえ、患者さんの健康維持・増進に貢献できる体制を作りましょう。
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