#機器選定ポイント #業務効率化 #紙カルテの電子化 #システム入替
目次
電子カルテを導入するメリット
まず、クリニックが電子カルテを導入するメリットから考えてみましょう。電子カルテの本質的目的は、カルテとレセプトの一致にあります。それは、実際の診療行為を正しくレセプトに反映することにほかなりません。受付、診察、そしてレセプト請求の流れが効率化されることがメリットとなります。
電子カルテの最大のメリットは、「カルテを回す」という行為がなくなることです。端末があればどの場所からでも瞬時にアクセスでき、スタッフ間の情報共有が簡単に行えることです。
カルテの保管場所が必要ないことも電子カルテのメリットでしょう。カルテは基本、最低5年間の保存義務があります。しかしながら、完了(治癒)から5年なので、実際にはそれ以上管理する必要があり、なかなか廃棄することが難しく、カルテの冊数は患者の増加と共に増え、厚さも増大していきます。このカルテの保管問題から解放されるのも電子カルテのメリットの一つです。
紙カルテから電子カルテに移行する際の注意点

既存のクリニックにおいては、電子カルテの導入にあたり、紙カルテから電子カルテへの移行という問題を考えなければなりません。移行するにあたり、まずは紙カルテの情報の移行を考える必要があります。アナログからデジタルの移行ですから、一筋縄ではいきません。
基本的にはレセプトデータの移行を行い、コスト欄(処方・処置・検査など)が閲覧・活用できるようにすることが一般的です。一方、紙カルテの経過欄(主訴・所見など)は、紙カルテをもとにサマリーを入力することが理想ですが、日々の診察の中で時間捻出が難しいため、一定期間は「紙カルテを回す」という運用が一般的です。患者が一周する3ヵ月~半年くらいは、電子カルテと紙カルテを並行して運用することになります。
また、紙カルテから電子カルテに頭を切り替えることも大切です。長年慣れた紙カルテの運用により、紙カルテがないと不安という声もよく聞きます。また、電子カルテで確認する習慣がないため、電子カルテに書かれた情報を見落としがちです。患者の情報は電子カルテで確認するという習慣を身に着けることが重要となります。
電子カルテの種類とは
クリニック向け電子カルテは、クラウド型、オンプレミス型、ハイブリッド型の3種類があります。クラウド型は企業のサーバーを利用するのに対し、オンプレミス型は院内にサーバーを設置することになります。ハイブリッド型は、院内にサーバーを設置し、クラウド上でもサーバーを運用する形(バックアップ)となります。
クラウド型は、企業が保有するサーバーを多数のユーザーでシェアをするという性格から、オンプレミス型に比べて価格が安いのが最大の特徴です。また、インターネットが使える環境があれば、どこでも使用できることも特徴でしょう。

オンプレミス型は、院内にサーバーを設置しているため、「動作が速い」「セキュリティレベルが高い」などの特徴があります。また、オンプレミス型はクラウド型に比べてカスタマイズの制限が少なく、周辺システムとの連動実績が多いことも特徴です。
ハイブリッド型は、院内にサーバーを設置し、クラウドにもサーバーを設置していることになるため、動作が早く、セキュリティ面でも安全であるという特徴があります。クラウド型の良い面とオンプレミス型の良い面を併せ持つのがハイブリッド型です。
電子カルテメーカーの選ぶ際のポイント(7つの比較軸)

電子カルテは、どんな基準で選べば良いのでしょうか。電子カルテを比較するためには、「サーバー」「機能・スペック」「操作性」「レセコン」「サポート」「コスト(価格)」「システム間連携」の7つの視点で比較することを提唱しています。各視点の比較ポイントを解説します。
(1)サーバー
クラウド型電子カルテは企業側の「サーバー」を利用するのに対し、オンプレミス型電子カルテは「サーバー」をクリニック内に設置します。また、院内サーバーとクラウドサーバーの両方に配置するハイブリッド型と呼ばれるものもあります。
- システムのスピードはサーバーと端末数が影響する
- サーバーによってサポート体制の違いが生まれる
- 電子カルテをインターネットにつなぐメリット・デメリットを検討する
(2)機能・スペック
「機能」とは、それぞれのシステムが保有している「働き」のことです。言い換えれば、何ができるかということです。システムを構築する際に、ユーザー側の要望を集めたものを「要求仕様書」と呼びますが、診療所では電子カルテパッケージの中から、ユーザーが要求する機能が備わっているかを確認することになります。
- 標準機能とオプション機能をしっかり確認する
- 要望する機能に優先順位をつける
- 機能に対するアクション(操作)のズレがない
(3)操作性
「操作性」とは、UI(User Interface)とも呼ばれますが、ユーザーが使いやすいようにシステムが設計されているかということであり、画面デザインが大きく影響します。
- ボタンが1か所にまとまっておりシンプルである
- 過去のカルテと本日のカルテがいつでも並べて見られる
- 慣れ親しんだ2号用紙に近い画面構成である
(4)レセコン
電子カルテの本質的目的は、カルテに記載された記録をコスト(診療報酬点数)に変換し、正しいレセプトを作り、請求することです。そのため、「レセコン」の機能および連携性はとても大切です。
- レセコン一体型かレセコン連動型かを確認する
- オーダー(処方・処置・検査等)時のサポート機能を確認する
- レセプト点検機能を確認する
(5)サポート
「サポート」は、導入前のサポートである「セッティング・操作指導」と導入後のサポートである「保守」があります。「保守」の中には、診療報酬改定の対応、トラブル時の対応、日々の相談対応などがあります。前者は電子カルテを使いこなすための準備、後者は電子カルテを止めないための保険と考えれば良いでしょう。
- セッティング・操作指導に係る内容及び作業日数を確認する
- 保守(訪問、リモート、オンライン)の内容を確認する
- 診療報酬の算定に関することを相談できるか確認する
(6)コスト(価格)
電子カルテの「価格」は、見積りが複雑であり、簡単に理解することは難しいと感じるかもしれません。また、オンプレミス(院内サーバー)型電子カルテに加えて、クラウド型電子カルテが出現して、ますます理解が難しくなっています。
- 電子カルテとレセコンをセットで計算する
- イニシャルコスト(初期費用)とランニングコスト(月額費用)をトータルで考える
- 電子カルテの更新にかかるコストを確認する
(7)システム間連携
「システム間連携」は、電子カルテとつながる様々な周辺システムとつなぐ作業になります。連携が多いシステムとしては、PACS(医用画像管理システム)、院内検査管理システム、診療予約システム、順番管理システム、Web問診システム、自動精算機・セルフレジ、オンライン診療システムなどがあります。年々、連携するシステムが増えており、連携は重要度が増しています。
- 連携するシステムの実績を確認する
- 連携レベルを確認する(ID連携、双方向連携など)
- 連携に係るコストを確認する
クリニック(診療所)向け電子カルテメーカー主要12社
<クラウド型電子カルテ:7社>
ウィーメックス(旧PHC)(Medicom)
診療所向けレセコン・電子カルテシェアNo.1※1の最大手メーカーから、満を持して完全クラウド型電子カルテが発売となりました。レセコンは一体型。コストを抑えながらも、25年以上6品種の電子カルテ開発経験※2を踏まえた使いやすさと、AI自動算定機能を搭載した充実のレセプトチェック機能により算定漏れを防ぎます。
※1株式会社富士経済「2022年 医療連携・医療プラットフォーム関連市場の現状と将来展望」より2020年企業シェア・数量ベース レセプトコンピューター(PHC実績)
株式会社富士経済「2023 医療・ヘルスケアDX関連市場の現状と将来展望」より2022年企業シェア・金額ベース 診療所向け電子カルテ(PHC実績)
※2メディコム沿革より。
エムスリー(M3DigiKar)
クラウド型電子カルテの老舗メーカーです。レセコンはORCA連動型とレセコン一体型の2種類から選べます。iPadを利用した「手書きで書ける電子カルテ」を提案しています。また、予約、受付、診察、精算までを完結する「デジスマ診療」を展開していることも注目です。
EMシステムズ(MAPs for CLINIC)
医科・調剤・介護のレセコンを手掛けるメーカーです。レセコンは一体型。医療保険と介護保険の両方の診療報酬請求が可能です。アプリケーション型であるため、ネットワークの障害時も、過去カルテの参照やカルテ入力、処方箋の発行が可能です。
NTTプレシジョンメディシン(モバカルネット)
「在宅医療」に特化した電子カルテを扱うメーカーです。在宅専門クリニックと外来+訪問診療の両方を行うクリニックでの利用を想定しており、レセコンはORCA連動型です。在宅医療特有の機能を多数搭載しているのが特長です(スケジュール機能、地図表示機能、物品管理機能、多職種間の情報共有機能など)。
DONUTS(CLIUS)
ゲームや勤怠管理システムのメーカーです。レセコンはORCA連動型。ウェブブラウザー型でありOSを選ばないのが特長です。予約システム、Web問診、電子カルテ、オンライン診療をセットで提案しており、電子カルテには、経営分析機能を標準装備しています。
メドレー(CLINICS)
オンライン診療・服薬指導システムのメーカーです。レセコンはORCA内包型であり、ほとんどORCA側の操作がないのが特長です。予約システム、Web問診、電子カルテ、オンライン診療をセットで提案しており、電子カルテには、経営分析機能を標準装備しています。
富士通(HOPE LifeMark-TX)
病院・診療所の老舗電子カルテメーカーです。スモールスタートが可能であり、導入後も柔軟なスケールアップできるので、クリニックの運用形態に応じたシステム運用を実現できます。また、HOPE LifeMark-コンシェルジュを組み合わせることで、予約、オンライン診療、キャッシュレス決済が可能です。
<オンプレミス型電子カルテ:5社>
ウィーメックス(旧PHC)(Medicom-HRf Hybrid Cloud)
クラウドとオンプレミスの良いところを組み合わせたハイブリッド型です。医療システムの開発50年以上の実績から信頼のノウハウ、サポート体制、レセコン及びレセプトチェック機能に定評があります。レセコンは一体型。全国に販売・サポート拠点を有し、サポート体制は国内最大級といえます。外部連携実績170社以上。院内でも訪問診療でも快適な操作性を実現しています。
ユヤマ(BrainBoxVⅣ)
調剤分包機、調剤レセコンを手掛けるシステムメーカーです。レセコンは一体型。医薬品データベースを搭載し、処方チェック機能に定評があります。クライアントに合わせて画面レイアウトを変更可能なのも特長です。
ラボテック(SUPER CLINIC Ⅳ)
首都圏を中心に展開する電子カルテ専門メーカーです。レセコンは一体型。「診療録(カルテ)」の本質を追求した直観的でシンプルな構造・操作性が特徴です。長年の実績により、多数の周辺システム(PACS、予約、問診、医療機器、自動精算機など)と連携可能です。
ダイナミクス(ダイナミクス)
開業医が開発した電子カルテを扱うメーカーです。レセコンは一体型。開発から20年以上の老舗システムとなります。システムのことから医院経営まで幅広い情報を入手できるメーリングリストがあり、ユーザーニーズを開発に生かしています。汎用のDBを利用しておりデータの抽出が容易です。
富士通(HOPE LifeMark-SX)
病院・診療所の老舗電子カルテメーカーです。レセコンは一体型。病院、診療所、介護、健診など様々なシステムを展開し、電子カルテとクラウドサービスを融合。地域包括ケアサービス、BCPサービス、Web診療予約などを提供しています。
メーカーまとめ

ご紹介した各メーカーが取り扱う電子カルテの形式をわかりやすく図にしたものがこちらです。クラウド型、オンプレミス型を中心に展開するメーカーがあります。
ウィーメックス(旧PHC)は、オンプレミス型の知見をベースにクラウド型も展開して、ニーズに合った電子カルテを選べることが特長です。