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目次
SOAPとは
電子カルテは診療に必要な情報を網羅的に記載することが大切です。しかし、体系立った記載をしないとかえって情報が見にくくなり、次回以降の診察時に「見落とし」の原因となります。
そこで、医療の場では「SOAP」という記録方法が採用されており、電子カルテもSOAPに沿った記載をするのが望ましいとされています。
SOAPとは「Subject(主観的情報)」「Object(客観的情報)」「Assessment(評価)」「Plan(計画)」の順に体系立てて診療の情報を記載する方法です。それぞれどのような意味をもっているのか詳しくみていきましょう。
Subject(主観的情報)とは
「S」は、診療時に患者さんが訴える症状のことです。具体的には「お腹が痛い」「熱がある」「便秘がある」などの主訴を指します。
また、「S」には患者さんの訴えだけでなく、家族や施設職員などから得られる情報も含まれます。とくに意思疎通が難しい小児や高齢者の場合は本人だけでなく、周囲の方からも正しく情報が得られる問診を心がけましょう。
なお、主訴がない、症状が安定しており変わらない場合もその旨を残し、空欄を作らないことで経過観察が容易になります。
Object(客観的情報)
「O」は客観的情報のことであり、身体所見や検査結果など客観的に患者さんの現状を捉えた情報のことです。記載内容は診療によりますが、聴診・触診・視診・内診などの所見、血液検査や画像検査などの検査所見が該当します。
診断の根拠となる部分のため、必要な情報を網羅して記載することが大切です。とくに身体所見は見返したときに、自分以外の医師や多職種が確認してもわかるように情報を整理して記載しましょう。
Assessment(評価)
「A」は、「S」と「O」から得られた情報を総合的に分析・考察して導いた評価のことです。単に診断名だけを記載するのではなく「S」と「O」の情報からどのようにして診断に至ったのか記載しておくと振り返りやすくなります。
また、万が一、医療過誤などを問われた際の正当性を訴える根拠となります。必要であれば除外診断も記載しておくとよいでしょう。
Plan(計画)
「P」は「A」で下した評価に対して、どのような治療や経過観察を行っていくかを計画する項目です。具体的には薬剤の処方内容、内服終了後の受診指示などを記載します。
適切な治療計画を立てるためには「S」「O」「A」を体系立てて記載し、医療情報を整理することが大切です。また「P」自体にも次回の診察につながるような内容を記載する必要があります。診療時に立てた計画がうまくいかなかったとき、どのように方針転換をしていくかといった考察を交えて記載しましょう。
SOAPでカルテを記載するメリット
SOAPで記載された電子カルテは、診断に至るまでのプロセスや今後の治療方針がまとめられているため、後から誰が見てもわかりやすいのが最大のメリットといえます。
また、主観的情報と客観的情報に分けて記載することで、情報が入り混ざらないため、考察の流れが明確になりやすいのもメリットの一つです。
とくに、どのような情報が重要なのか判断がつきにくい若手医師は、SOAPにのっとった記載の習慣を身につけることで、問題点を洗い出し考察するスキルの習得につながります。
SOAPにより生じるデメリット
SOAPによる電子カルテ記載は診療内容の整理がしやすく、かつ記載者以外の医師やコメディカルが後から見てもわかりやすい反面、記載するのに時間がかかるかもしれません。そのため、一刻を争う救急医療の場ではSOAPで運用することが難しいといわれています。
また、原則的にSOAPは一つの問題に対する評価や計画を導く記載方法のため、多発外傷といった同時に複数の症状がある患者さんの場合は、情報がまとまりづらくなるかもしれません。
SOAPで電子カルテを記載する際のポイント・注意点
SOAPにのっとった電子カルテには多くのメリットがある一方、記載方法に注意しないとメリットが十分に活かせないこともあります。どのような点に注意すべきか詳しくみていきましょう。
必要な情報を簡潔にわかりやすくまとめる
SOAPは、診断に至るプロセスや治療方針の決定を体系立てて記載できる記録方法です。しかし、主観的情報や客観的情報の項目に診断と関連性のない情報を記載したり、過剰な鑑別診断を入れ込んだりすると情報量過多の電子カルテになってしまいます。
情報の多いカルテは、ほかの医師やコメディカルが見返したときに重要な情報を見逃すリスクとなる可能性があります。共有すべき情報が確認しやすいよう、できるだけ簡潔かつ端的にまとめるのがポイントです。
評価(A)と計画(P)は考察まで漏れなく記載する
主観的情報と客観的情報からどのように考えて評価し計画を立てたのか、正しく漏れなく記載することも大切です。
診断や治療方法のみの記載だと、見返したときにどのようなプロセスでその結果となったのか辿れなくなるため、万が一医療過誤となったときなどに医療の妥当性を証明できない可能性があります。
忙しい診療の中で完全な記録を残すのは簡単ではありません。テンプレートや定型文、メモなど電子カルテの機能を活用すると、記載の負担を軽減できます。
コピーアンドペースト活用時は最新情報を反映する
電子カルテだからこそできる記載方法として、コピーアンドペーストが挙げられます。過去の記載から必要な部分をコピーして、直近の記載内容としてペーストすれば記載の負担を減らせます。
便利な反面、安易な利用には注意が必要です。その理由は、目の前の患者さんの状態と合わない記載が残ってしまう可能性があるためです。
SOAPはすべての内容が連動しているからこそ、わかりやすくまとまった記載ができます。コピーアンドペーストを活用する際は、診察時の内容が正しく反映できているかを確認したうえで完了させる運用を心がけましょう。
SOAPでの記載例
ここからは、SOAPによる記載例を【症例要約】の内容を元に、良い例・悪い例に分けて提示します。院内のカルテ記載チェックの参考になさってください。
【症例要約】
50歳、男性。既往歴なし。4日前から発熱、痰がらみの咳とのどの痛みがあり受診。体温38.0℃、意識清明。BP120/56、脈拍70/分、SpO2 97%。インフルエンザ迅速診断キットでA陽性。胸部聴診所見に異常なく、咽頭は赤く腫れている。胸部レントゲン検査で異常所見なし。
インフルエンザA型と診断した。発症から48時間以上経過しているため抗ウイルス薬の投与はせずに、非ステロイド系消炎鎮痛剤、鎮咳去痰薬などを用いた対症療法で様子を見ることとした。
良い例
「S」
4日前から発熱、端がらみの咳あり、咽頭痛がある。
【既往歴】なし
【内服薬】なし
「O」
体温38.0℃、SpO2 97%
インフルエンザ迅速診断キットでA陽性
聴診所見異常なし。咽頭は赤く腫れている。
胸部レントゲン検査で異常所見なし。
「A」
検査結果より、インフルエンザA型と診断。
バイタルに問題なく、発症から48時間経過しているため、抗ウイルス薬の適応は原則なし。ただし、発熱継続しており、症状強く下記処方を行った上で経過観察が必要。
「P」
非ステロイド系消炎鎮痛剤と鎮咳去痰薬を処方して経過観察。
数日以内に軽快が予想されるが、処方薬を飲み切っても症状が続くようであれば再診するよう説明した。
悪い例
「S」
38.0℃
「O」
咽頭に腫脹あり
聴診所見異常なし
胸部レントゲン検査で異常所見なし。
「A」
迅速診断キットの結果より、インフルエンザA型と診断。
「P」
バイタルの問題ないため、内服薬処方し経過観察を指示。
悪い例では所見に対する記載が薄く、結果として評価の内容との乖離が生じています。極端に感じるかもしれませんが、内容が希薄なカルテは珍しくありません。SとOは患者さんから得られた情報、AとPは医療者側がSとOを元にまとめた情報を記載するよう意識しましょう。
SOAPでの記載は使いやすい電子カルテも重要
SOAPによるカルテ記載は、診療記録であり医療の質改善にも役立つ大切な情報源です。日常的な使いやすさや利活用のしやすさにおいて、どのような電子カルテを使うかは重要です。
電子カルテは、クラウド型・オンプレミス型・ハイブリッド型の選択肢があります。それぞれ異なる特徴をもつため、比較検討が欠かせません。そこで、電子カルテの選び方をまとめたページをご用意しております。資料請求やデモ予約など、必要な情報がワンストップで完了するため、ご活用ください。
電子カルテの選び方を解説しているページはこちらから:メディコムがご提案する失敗しない電子カルテの選び方
まとめ
電子カルテは大量の医療情報を効率よく保存できるシステムです。電子カルテの導入により、スタッフ同士で多くの医療情報を共有しやすくなりました。一方で、すべての医師やコメディカルが確認してもわかりやすい電子カルテを記載するスキルも求められています。
今回は、電子カルテに適したSOAPにのっとった記載方法について詳しく解説しました。メリットもデメリットもありますが、この記事を参考にどの項目に何を記載すべきか注意しながら体系立てた記載ができるようにしましょう。
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