クリニック開業でおさえるべき5つの法律ガイド
クリニック開業の夢が、法律トラブルで台無しに…そのような事態は避けたいものです。「スタッフとの労務トラブル」「個人情報漏洩での賠償請求」「医療広告ガイドライン違反で行政指導」など、開業後のトラブルの多くは、事前の法律知識があれば防げる可能性があります。本記事では、クリニック開業時に必ずおさえるべき5つの法律(医療法・健康保険法・労働法・個人情報保護法・民法)を、開業医目線で解説します。「知らなかった」では済まされない法的リスクを回避し、安心してクリニック経営をスタートさせるための必須知識を、一緒に学んでいきましょう。
※本内容は公開日時点の情報です
目次
1.「医療法」クリニック開業の土台
クリニック開業の基本となる法律が医療法です。医療法はクリニックの定義から設立手続き、広告規制、建築基準まで幅広い内容を網羅しており、開業準備を進めるうえで必ず理解しておく必要があります。以下では、とくに重要な3つのポイントについて詳しく解説します。

クリニックの設立・運営にかかわる法律
医療法は、クリニックの設立から運営に至るまで広範囲の内容をカバーしています。
具体的には、以下4つの内容について手続きやルールを定めています。
内容 | 関連する法律 | 概要 |
---|---|---|
1.病院かクリニックかの施設区分 | 医療法1条の5 |
|
2.個人か法人かの開設時手続き |
|
|
3.エックス線装置設置の届出 | 医療法15条3項 | エックス線装置を設置した場合は、設置後10日以内に所在地の都道府県知事への届出が必要 |
4.広告に関する規制 | 医療法6条の5 |
|
4.広告に関する規制の「医療広告ガイドライン」について、次の見出しで詳細にお伝えします。
集患時に要注意「医療広告ガイドライン」
医療広告ガイドラインとは、医療法に基づいて定められた医療機関の広告規制に関する指針です。患者さんが適切な医療機関を選択できるよう、虚偽の広告をしないことが求められています。
よく見かける表現でも実際は違反となるケースが多く、たとえば最上級表現や根拠のない効果を謳う表現などは禁止されています。違反した場合は行政指導や罰則の対象となるため、自院のウェブサイト制作時や広告出稿時は必読です。
さらに詳しい内容については、厚生労働省の解説資料で具体的な事例の確認をおすすめします。
出典:厚生労働省「医療広告規制におけるウェブサイト等の事例解説書(第5版)」(https://www.mhlw.go.jp/content/001439423.pdf )
クリニック建築時は医療法だけでなく「建築基準法」も確認
クリニックを建築する場合、医療法に加えて建築基準法の遵守が必要です。診察室の面積9.9平方メートル以上の基準をはじめ、通路幅や天井高、換気設備など細かな規定が設けられています。
医療法と建築基準法で異なる基準が定められている場合は、より厳しい建築基準法が優先されるため、すみ分けと情報の整理が必要です。さらに、バリアフリー法や各地方公共団体の条例による追加規制もあり、すべてを医師個人で把握することは現実的ではありません。
そのため、クリニック建築の実績が豊富な建築会社や設計事務所に依頼することで、法的リスクを回避しながら効率的な開業準備を進められます。
2.「健康保険法」保険診療に関する法律
クリニックの収入の大部分を占める保険診療を行うためには、健康保険法に基づく各種手続きとルールの遵守が不可欠です。
まず、保険医療機関として厚生労働大臣の指定が必要です。クリニックの所在地を管轄する地方厚生局に所定の申請を行う必要があります。審査は地域によって書式や日程などが異なるため、事前に確認しておきましょう。
保険医療機関と指定されると、診療報酬の算定が可能になります。診療報酬は厚生労働大臣告示で定められる診療報酬点数に従って一律の金額が定められており、全国どこでも同じ医療行為には同じ報酬が支払われる仕組みです。
点数は2年に1度の診療報酬改定で見直されるため、常に最新の情報を把握し院内の体制を確認する必要があります。
診療報酬改定は、以下のページで最新情報をまとめているため、参考になさってください。
参考記事:【2026年度診療報酬改定】全体像と医療現場への影響を解説
3.「労働法」雇用に関する法律
クリニック経営において、とくにトラブルとなりやすいのが労働法関連の問題です。スタッフを雇用する際は労働基準法と労働契約法の両方を理解し、開業前に適切な雇用体制を構築することで安定した運営が実現します。
労働基準法は、労働条件の最低ラインを定めた法律です。具体的には、以下の内容に関するルールが該当します。
【労働基準法の内容例】
- 労働条件の明示
- 労働時間
- 休憩時間
- 休日
- 時間外労働
- 年次有給休暇
- 就業規則の制定
労働契約法は事業主(使用者)と労働者間の契約に関するルールを定めた法律です。とくに以下3点が将来的なトラブル防止の観点から重要です。
【労働契約法で重要な3つのルール】
- 解雇権濫用の法理:合理的な理由のないスタッフの解雇などに関するルール
- 無期転換ルール:5年以上雇用したスタッフからの申し出により無期雇用契約に転換するルール
- 雇止め法理:期間満了で打ち切ることを制限するルール
開業後に慌てて対応するのではなく、事前に盤石な雇用体制を構築しておくことで、安定したクリニック運営につながります。
以下の資料でより詳しく解説しているため、あわせてご活用ください。
資料ダウンロードはこちらから:押さえておきたい!クリニック開業・運営に関わる5つの法律
4.「個人情報保護法」患者の個人情報に関する法律
医療機関は患者さんの機微な個人情報を大量に取り扱うため、個人情報保護法に基づく厳格な管理が求められます。情報漏洩を起こしてしまうと患者さんからの信頼を損なうだけでなく、高額な賠償責任にもつながるリスクであるため、適切な対策が欠かせません。
個人情報保護法の内容と具体例は、以下のとおりです。
内容 | 具体例 |
---|---|
個人情報(個人データ)の取得・利用 | 個人情報の不適切利用や本人の同意を得ない第三者への提供などの禁止 |
個人データの安全管理 | 個人情報が入ったUSBメモリやパソコンの紛失、患者情報を含むメールの誤送信、フィッシング詐欺や不正アクセスによる情報流出への対策 |
本人による開示請求への対応 | 患者さん本人からの開示請求などに対応できる体制整備 |
たとえば、情報漏洩が発生すると、100万円以上の賠償額事例もあるため、取り扱いと漏洩への対策は万全を期す必要があります。
セキュリティが堅牢な電子カルテシステムの導入も有効策の一つです。ウィーメックス株式会社のメディコムシリーズでは、不正アクセスを防止するファイアーウォールやウィルス対策ソフトの標準搭載など、情報管理機能を有しております。
5.「民法」損害賠償のルールを定める法律
医療行為には常に訴訟リスクが伴います。民法に基づく損害賠償責任を理解するとともに、万が一の事態に備えた体制整備が重要です。
たとえば、医療ミスによって患者さんの症状を悪化させてしまった場合、診療契約違反(債務不履行)または不法行為に該当し、医師または医療法人が損害賠償責任を負う可能性があります。
損害賠償の範囲には治療費や慰謝料などが含まれ、賠償額は数千万円に及ぶケースもあります。日頃から診療記録を詳細に残し、医学的根拠に基づいた診療を心がけることで法的リスクの軽減が可能です。
具体的には、電子カルテのテンプレート機能や定型文登録など、記載漏れを防止し診療記録として正確な内容を残す工夫が挙げられます。
法的リスクに備えた開業・運用のために
クリニック開業に関する法律は医療法・健康保険法・労働法・個人情報保護法・民法など多岐にわたり、すべてを正確に把握することは極めて困難です。しかし、法的リスクへの対策は3つのポイントをおさえることで効果的に管理できます。
- 専門家のサポートを積極的に活用する
- ITツールを活用してヒューマンエラーを防ぐ
- 定期的な情報収集を続ける
とくに、医療広告ガイドラインは事例集がよく更新されるため、情報が更新されたときにチェックしておくのが理想です。とはいえ開業医は多忙なため、メディコムパークのようにトレンド情報を配信しているサイトを定期的にチェックすると、ご自身に合った方法で効率的に情報収集できます。
開業に関するさまざまなお悩みに応える無料コンテンツを多数ご用意していますので、ぜひご活用ください。
開業に関する動画コンテンツはこちらから:動画セミナー一覧
開業に関するお役立ち情報はこちらから:お役立ち資料一覧
また、本記事の内容をガイドブックとしてまとめた資料も、以下より無料でダウンロードできます。法的リスクを適切に管理し、安心してクリニック経営に専念する環境を整えましょう。
無料ダウンロードはこちらから:押さえておきたい!クリニック開業・運営に関わる5つの法律
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