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医師は副業をしても問題ない?
医師は、研修医と公務員医師を除き原則副業可能です。2024年4月から施行された「医師の働き方改革」により、時間外労働の上限が年間960時間(すべての勤務医に適用されるA水準の上限)と定められました。
ただし、繰り返しになりますが研修医と公務員医師は対象外です。研修医は医師法に基づき臨床研修に専念する義務があるため、公務員医師は国家公務員法・地方公務員法により兼業が制限されています。
そのほか、勤務先の就業規則に「副業不可」と明記されている場合も、副業はできません。就業規則の内容は勤務先によって異なるため、副業を始める前に必ず確認しましょう。
時間外労働の上限について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
医師ができる副業7選
医師の専門知識や経験が活きる副業は複数あります。ここでは、医師が取り組みやすい副業を7つ紹介します。
非常勤医師
非常勤医師は、医師だからこそできる副業の第一候補に挙げられます。他の医療機関で診療することで、本業とは異なる環境での経験を積めます。週末や夜間など自分の都合にあわせやすい求人を探せば、それほど負担は重くならないでしょう。
ただし、本業との時間外(労働時間)の合計が年間960時間を超えないように、スケジュールの調整は必須です。
時給は1万円前後が相場ですが、地域や診療科によって変動します。将来、独立開業を検討している場合、顔の見えるネットワーク構築にも役立ちます。
オンライン診療・健康相談
オンライン健康相談は、インターネットを通じて患者さんからの健康相談に応じる副業です。スマートフォンやパソコンがあれば仕事ができるため、通勤時間がかからず時間効率に優れている点が特徴です。
プラットフォームを利用すれば効率的に稼働できるため、空き時間を活用できる柔軟性の高い副業といえるでしょう。
時給は数千円~1万円が相場です。オンラインの活用は国としても普及させる動きがあるため、将来的に活躍の場を広げられる選択肢の1つです。
スポットアルバイト
スポットアルバイトは企業の健康診断など、短期的に医師が必要とされる場面で働く副業です。年齢や経験が不問の案件も多く定期的な勤務ではないため、本業の負担にならずに取り組めるでしょう。
医師専門の人材紹介会社や求人サイトで、さまざまな求人情報を見つけられます。数時間~1日単位設定の案件が多く、スケジュールの調整は比較的容易な副業です。時給は数万円、交通費が別途支給されるケースが大半です。
講演・セミナー講師
医師としての専門知識を活かし、一般市民や企業の従業員に向けて健康や医療に関する講演を行う副業です。学会発表の経験がある医師であれば、比較的取り組みやすい副業といえます。
同じテーマで複数回講演すれば、準備の手間や負担を軽減させながら取り組めます。また、自分の専門分野をアピールする機会にもなり、知名度向上にもつながるでしょう。
相場は、1時間当たり10万円~30万円程度です。ただし、謝礼金は先生自身の知名度や専門性により変動します。
記事の執筆・監修
記事の執筆・監修は、医療メディアやウェブサイト向けに記事を書いたり、内容をチェックしたりする副業です。医学的知識を一般の方にわかりやすく伝えることや、記載内容の正確性を判断する能力が求められます。
空き時間を利用してパソコン1台あれば取り組めるため、場所や時間を選ばない点は大きなメリットです。
記事執筆も監修の場合でも、1記事あたり数万円が相場です。
医療翻訳
医療翻訳は、海外の医学論文や製薬会社の資料などを翻訳する副業です。医学知識と語学力が活かせる数少ない仕事といえます。
報酬は1文字当たり30円~35円が相場です。専門性が高いため、一般的な翻訳よりも高単価に設定されている傾向にあります。継続的に依頼を受けられれば、安定した収入になるだけでなく、海外の医療情報に触れられる貴重な機会にもなります。
往診代行
往診代行は、在宅診療クリニックや訪問診療専門クリニックに変わり、患者さんの元に訪問する副業です。とくに夜間や休日の緊急対応ができる医師は重宝されます。
オンコール代行を提供しているサービスの求人を選べば、応答の負担を軽減しながら本業と両立できるでしょう。
報酬は呼ばれた件数による従量課金制と月額制で異なります。料金にも幅があるため、複数のサービスを比較し条件に合ったところを選択しましょう。
副業を始める際に確認しておくべきポイント
医師が副業を始める前に確認しておくべきポイントが2つあります。守らなければ、法的な問題や職場でのトラブルに発展する可能性があるため、事前に目を通しておきましょう。
時間外労働の上限を遵守する
医師の働き方改革で時間外労働の上限が設けられているため、自身が該当する区分(A・B・C)を確認し、副業に充てる時間を明確にしましょう。たとえば、週20時間副業すると年間1,000時間になり、A水準の960時間を超えてしまいます。
あらためて、区分による年間の上限は以下のとおりです。
- A水準:960時間
- B水準・C水準:1,860時間
とくに複数の医療機関で働こうと計画している場合、それぞれの勤務時間をいつでも把握できる仕組みづくりをおすすめします。たとえば、勤務記録アプリや簡単なエクセルシートを使い、稼働時間を後から見返せるようにしておくと効率的です。
働き方改革の概要から確認したい方は以下のコラムで解説しているため、あわせてご覧ください。
勤務先の就業規則を確認する
勤務先の就業規則に「副業禁止」の規定がないかは必ず確認しましょう。副業が禁止されているにもかかわらず行ってしまった場合、職務規定違反に該当します。始末書の提出や懲戒処分、減給などなんらかの処罰の対象となる可能性があります。
また、就業規則から派生した別の規定が設けられている場合も少なくありません。面倒であっても、上司や人事部門に事実確認をとり、透明性を保つことが最良の選択です。
副業で得られた収入の経費精算方法
副業で得られた収入は、適切に税務処理する必要があります。副業収入から経費を差し引いた金額(所得)が20万円以上の場合、確定申告が必要です。
申告を怠ったり遅れたりすると、本来払うべき税金に加えて、延滞税や過少申告加算税などが課される追徴課税の対象となる可能性があります。
確定申告の手続きは面倒に感じるかもしれませんが、効率化できる方法は複数あります。たとえば、確定申告までワンストップで管理できるスマートフォンアプリを利用すれば経費計算が簡単です。
また、副業収入が多い場合は、費用対効果を考慮して税理士に依頼するのも1つの選択肢です。
なお、国税庁が提供するe-Taxを使えば、自宅や勤務先など都合の良い場所・時間で手続きができるため、事務的な負担を軽減できます。
副業ができない場合の対応策
副業が制限される場合、節税による資産形成の工夫や病院で経験を積みながら理想とする医療を実現する開業という選択肢もあります。どちらも知識として持っておくと可能性の拡大につながるため、解説します。
なお、キャリアの選択について解説したセミナーを用意しています。以下より無料で視聴できるため、ぜひお役立てください。
セミナーはこちらから:これからの医師のキャリア選択と開業の選択肢
節税対策に取り組む
高所得者に属する傾向のある医師こそ、節税対策による効果は大きいものがあります。所得税は累進課税制度のため、年収が高くなるほど税率も上がります。そのため、適切な所得控除を活用すれば手取りの増額が可能です。
所得控除は複数あるため、まずは自分に当てはまるもの1つから始めるとよいでしょう。具体的な所得控除は以下のとおりです。
- 配偶者控除・配偶者特別控除:配偶者の年収に応じて適用される控除
- 扶養控除:扶養家族(配偶者を除く)がいる場合に適用される控除
- 社会保険料控除:支払った社会保険料の全額が対象の控除
- 生命保険料控除:生命保険や個人年金保険に対する控除
- 地震保険料控除:地震保険料に対する控除
- 小規模企業共済等掛金控除:支払った全額が対象の控除
- 医療費控除:年間の医療費が一定額を超えた場合に適用される控除
- 寄付金控除:ふるさと納税に代表される特定団体への寄付金に対する控除
開業する
副業ができない場合、思い切って開業するのも1つの選択肢です。現在の勤務先を完全に辞めずに、週に数日だけ診療するクリニックを開業することも可能です。この方法なら勤務医として医療技術を磨きながら、自分の理想とする診療を提供する場を作れます。
また、開業することで医業所得として計上できる範囲が広がり、結果的に節税効果も期待できます。初期投資を抑えたい場合は、医療モールでの開業や承継なども検討できるでしょう。
開業に関する詳しい内容は、以下のコラムや特集ページが参考になるため、ぜひご覧ください。
コラムはこちら:医師の開業は成功可能性大!知っておくべき準備と対策
特集ページはこちら:クリニック開業ガイド
開業を検討するならMedicom の電子カルテ
開業を検討する際、基幹システムの電子カルテ選びは重要です。長く使うシステムであり、国の施策である医療DXの根幹として重要性は増していきます。
ウィーメックス株式会社では、2つの電子カルテシステムを用意しています。特集ページでそれぞれの特徴や違いをまとめているため、以下よりご覧ください。
特集ページはこちらから:メディコムがご提案する失敗しない電子カルテの選び方
まとめ
医師の副業は労働時間の上限を遵守し、勤務先の就業規則に違反しなければ問題ありません。
選択肢は豊富にあるため、ご自身に合う副業はどれなのかトライアンドエラーでチャレンジするのもよい経験になるでしょう。副業ができない場合でも節税対策や開業で可能性を広げられます。
まずは、現在のライフスタイルに合った副業から始めてみてはいかがでしょうか。
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