【2025年最新】服薬情報等提供料1,2,3の算定要件とトレーシングレポート作成のポイント
服薬情報等提供料とは、患者さんの服薬状況や体調変化に応じた情報提供・指導を行った際に算定できる加算です。特に2024年度(令和6年度)の診療報酬改定では、服薬情報等提供料1・2・3の算定要件が見直され、より実務に即した運用が求められるようになりました。また、トレーシングレポートの作成方法など、現場で迷いやすいポイントも存在します。この記事では、服薬情報等提供料の概要から各区分の違い、2024年度改定による変更点、トレーシングレポートの作成のコツまで制度運用に役立つ情報を分かりやすく解説します。
※本内容は公開日時点の情報です
目次
服薬情報等提供料とは?主な役割と目的

服薬情報等提供料とは、薬剤師が医師や医療機関、患者さんなどに情報提供を行った際に算定できる薬学管理料のことです。情報提供を行うことで、医療機関と保険薬局が連携し、医薬品の適正使用を推進することを目的としています。
これまでは服薬情報等提供料1と服薬情報等提供料2の2種類しかありませんでしたが、2022年度診療報酬改定により服薬情報等提供料3が新設されました。
「疑義照会と何が違うのか」と疑問に思われる方もいるかもしれません。疑義照会はその場ですぐに確認を行うべきものであるのに対して、服薬情報等提供料は緊急性がなく、次回の処方時に役立つ情報を提供するものです。
うまく活用することで、服薬コンプライアンスを向上させたり、より良い治療計画を立てられたりするようになるでしょう。
2024年度診療報酬改定による主な変更点
2024年度の診療報酬改定では、服薬情報等提供料の制度が大きく刷新され、より多様な場面で薬剤師の継続的な関与が評価されるようになりました。薬局の地域におけるかかりつけ機能に応じた適切な評価が行われるようになり、さらに薬局・薬剤師業務の対物中心から対人中心への転換が推進されるようになったのです。
まず大きく変わったのは、リフィル処方箋調剤への対応が正式に評価対象となったことです。新たにリフィル処方箋の調剤に伴う情報提供が服薬情報等提供料の対象に加えられ、必要に応じて処方医へ文書で情報提供することで服薬情報等提供料2を算定できるようになりました。
さらに、制度の範囲が歯科にも拡大され、連携強化が進みました。これまで医科に限定されていた情報提供の対象が、歯科医療機関にも明示的に拡大されたのです。この他、服薬情報等提供料2が3つのパターンに細分化されました。
また、服薬管理や指導に関する項目の見直しが行われ、オンライン服薬指導や服薬フォローアップの取り組みが点数として明確に位置づけられました。
在宅訪問やトレーシングレポートなど、医師との連携を通じたチーム医療への参画も評価対象に含まれ、地域医療を支える薬剤師の役割が一層強化されています。
服薬情報等提供料1・2・3の算定要件と違いを徹底解説
服薬情報等提供料は、薬剤師が医師や関係職種と連携しながら患者さんの服薬を支援する取り組みに対して評価される加算です。
2024年度の診療報酬改定では、服薬情報等提供料1、服薬情報等提供料2、服薬情報等提供料3と3つの区分に整理され、さらに服薬情報等提供料2が「イ・ロ・ハ」の3つに分けられました。それぞれの算定要件は以下のとおりです。
区分 | 点数 | 算定可能回数 | 算定要件 |
---|---|---|---|
服薬情報等提供料1 | 30点 | 月に1回 | 医療機関からの求めによる医療機関への情報提供を行った際に算定できる |
服薬情報等提供料2(イ) | 20点 | 月に1回 | 薬剤師が必要性を認めた場合に医療機関へ情報提供を行った際に算定できる |
服薬情報等提供料2(ロ) | 20点 | 月に1回 | 薬剤師が必要性を認めた場合にリフィル処方箋調剤に伴う情報提供を処方医へ行った際に算定できる |
服薬情報等提供料2(ハ) | 20点 | 月に1回 | 薬剤師が必要性を認めた場合に介護支援専門員へ情報提供を行った際に算定できる |
服薬情報等提供料3 | 50点 | 3ヶ月に1回 | 入院前の患者に関する情報提供を医療機関に行った際に算定できる |
さらに詳しい算定要件を以下で解説します。
出典:令和6年度診療報酬改定の概要(厚生労働省)(https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001238903.pdf)
服薬情報等提供料1の算定要件
服薬情報等提供料1は、保険医療機関(医科・歯科)等から患者さんの服薬情報に関する照会があった場合、文書で情報提供を行うことで月に1回算定できる加算です。
複数の医師または歯科医師に情報提供を行った場合は、医師または歯科医師ごとに月1回のみ算定できます。
患者さんの服薬状況や副作用の有無、服薬アドヒアランスなどが情報提供の対象となります。歯科医療機関からの照会に対応するケースも対象に含まれ、これまでより広い範囲の医療機関に対応が必要となりました。服薬情報等提供料1を算定できるケースには、主に次の3つがあります。
- 患者さんに残薬がないか医療機関から求めがあった場合
- 分割調剤やリフィル処方箋による調剤を行い、2回目以降の調剤をする際に患者さんの状況を情報提供した場合
- 患者さんが服用している薬の情報を入院前に情報提供した場合
服薬情報等提供料2の算定要件
服薬情報等提供料2は、薬局から能動的に行う情報提供が対象です。2024年度の改定により、3つのパターンに細分化されました。具体的には、以下のように分かれています。
(イ)医科や歯科の医療機関へ情報提供
副作用の疑いや服薬中断、服薬アドヒアランスの低下など、薬学的に問題があると判断された場合に文書で報告することで算定可能です。
(ロ)リフィル処方箋調剤に伴う処方医への情報提供
リフィルの2回目の調剤時に副作用の有無などを確認し、必要に応じて医師に文書で報告することで算定できます。
(ハ)介護支援専門員への情報提供
在宅療養中の患者さんについて、服薬内容や服薬状況などを提供する際に算定できるものです。
いずれの場合も算定できる点数は20点で、月に1回算定できます。服薬内容や患者さんの状態にもとづいた専門的な情報を適切な形式で提供することが求められます。なお、服薬情報等提供料2を算定するためには、患者さんの同意を得なければなりません。
服薬情報等提供料3の算定要件
服薬情報等提供料3は、入院を控えた患者さんについて、医療機関からの求めがあった場合に算定できる加算です。
薬剤師が患者さんの同意を得たうえで服用している薬の情報を一元的に把握し、必要に応じて持参薬の整理を行います。そのうえで、医療機関に対して必要な情報を文書で提供した場合に、3ヶ月に1回を限度として算定可能です。
提供する情報には、医療機関から処方された薬の他、市販薬(OTC)、健康食品、サプリメントなども含まれ、正確かつ包括的な薬剤管理が求められます。
また、処方薬は自薬局で調剤したものだけでなく、他の薬局で出されたものについても把握しておかなければなりません。入院時の医療安全の観点からも、重要な役割を担います。
トレーシングレポート作成の流れと実践ポイント
2024年度の診療報酬改定により、このような文書による情報提供は服薬情報等提供料として評価されるようになり、薬剤師の専門的な関与が制度的にも重視されるようになりました。
トレーシングレポートとは、薬剤師が患者さんの服薬状況や体調の変化、副作用の兆候などを確認し、それらの情報を医師などに文書で報告するための記録文書です。
患者さんとの服薬指導や面談を通じて得られた薬学的知見をもとに、必要な情報を客観的かつ簡潔に伝えることが目的とされています。
出典:「医療機関・薬局間の情報」の共有・標準化等について(厚生労働省)(https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001309908.pdf)
トレーシングレポートに記載すべき項目
トレーシングレポートには、患者さんの服薬状況に関する情報を正確かつ具体的に記載する必要があります。主な記載項目は、次のとおりです。
- 情報提供の概要
- 処方薬の情報
- 併用薬剤の情報
- 処方薬剤の服用状況およびそれに対する指導に関する情報
- 患者さん、または家族、介護者からの情報
- 薬剤に関する提案
加えて、レポートの作成日や作成者名、連絡先などの記載も必要です。記録の客観性と一貫性が重視されており、感情的・主観的な表現を避け、事実にもとづいた記述を行うことが求められます。
参考:情報提供・処方提案実践のためのトレーシングレポート事例集(新潟県薬剤師会)(https://www.niiyaku.or.jp/wp-content/uploads/2024/03/20240325_TRjireishu.pdf)
関連記事:服薬情報提供書(トレーシングレポート)とは?運用方法を解説
情報提供・提案内容の記載のポイント
トレーシングレポートにおける情報提供・提案は、医師や医療機関の負担にならないよう、簡潔かつ要点を絞って記載することが重要です。患者さんの氏名、生年月日、性別、処方医名、報告日時などの基本情報を明記し、報告の目的や問題点、薬剤師としての所見・提案を分かりやすく示しましょう。
特に副作用や服薬中断などの問題点は、根拠や症状の経過を客観的に記録することで、医師の判断をサポートできます。
しかし、日々の業務に追われトレーシングレポートの作成にあまり時間を割けないという薬剤師の方も多いのではないでしょうか。
WEMEXの電子薬歴システム「PharnesX-MX」を使用すれば、患者さんの情報を一元的に管理することができ、トレーシングレポート(服薬情報提供書)の作成がスムーズに行えます。業務の効率化と情報伝達の質の向上にお悩みの方は、ぜひ一度お問い合わせください。
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