目次
※本記事は2025年7月16日執筆時点の情報に基づき記載しております。
医療DX推進体制整備加算とは
医療DX推進体制整備加算は、2024年の診療報酬改定で新設された点数の1つです。本加算は、医療機関が医療DXを推進するための体制を整備した場合の評価として算定できます。
目的は、医療機関における情報通信技術(ICT)の活用を促進し、医療の質向上や業務効率化を図ることです。具体的には、患者さんがマイナンバーカードを保険証として利用できるようにしたり、診療情報を患者さん自身や医療機関同士でオンラインから閲覧・共有できるようにしたりする取り組みを評価するものです。
創設以来、2024年10月・2025年4月と定期的に見直しが入り、2025年10月も変更が予定されるなど、医療DXの推進状況に応じて要件が段階的に厳格化されています。

出典:厚生労働省「中央社会保険医療協議会総会(第603回)総8-3答申について」
(https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001388387.pdf)
医療DX推進体制整備加算の算定要件(2025年4月以降)
2025年4月の変更において、算定要件は従来と大きく変わっていません。初診料に対する加算として、月1回算定可能です。
診療報酬上の算定要件は以下のとおりです。
“医療DX推進に係る体制として別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方厚生局長等に届け出た保険医療機関を受診した患者に対して初診を行った場合は、医療DX推進体制整備加算として、月1回に限り、当該基準に係る区分に従い、次に掲げる点数をそれぞれ所定点数に加算する。
イ 医療DX推進体制整備加算1:12点
ロ 医療DX推進体制整備加算2:11点
ハ 医療DX推進体制整備加算3:10点
ニ 医療DX推進体制整備加算4:10点
ホ 医療DX推進体制整備加算5:9点
ヘ 医療DX推進体制整備加算6:8点“
出典:厚生労働省「中央社会保険医療協議会総会(第603回)総8-3答申について」
(https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001388387.pdf)
医療DX推進体制整備加算の施設基準(2025年4月からの変更点)
医療DX推進体制整備加算の施設基準は、2025年3月31日までの経過措置となっていた「電子処方箋への対応状況」によって大きく2分されました。
具体的には、電子処方箋に対応している医療機関は加算1~3を算定でき、未対応の場合は加算4~6が算定対象です。
以下資料のとおり、施設基準の(4)が経過措置から外れました。また、(5)の経過措置が9月30日までとなっているため、10月以降に見直しが入ると予想できます。

出典:厚生労働省関東甲信越厚生局「医療DX推進体制整備加算等の見直しについて」
(https://kouseikyoku.mhlw.go.jp/kantoshinetsu/070312_001.pdf)
2025年は電子カルテ情報共有サービスへの対応がポイント
2025年の医療DX推進体制整備加算では、電子カルテ情報共有サービスへの対応が重要なポイントとなります。施設基準に「電子カルテ情報共有サービスの体制整備」が、2025年9月末までの経過措置として設けられています。
電子カルテ情報共有サービスは、患者さんの診療情報を医療機関同士で安全に共有したり、本人が閲覧できたりするシステムです。2025年1月からモデル事業がスタートしており、マイナ保険証の利用促進や電子処方箋の普及など、医療DXを推進する動きが加速していることから、2025年10月以降は本格的な運用を求められると予想されます。
医療機関としては早めの準備により、患者サービスの向上と診療報酬の適切な算定を実現できるでしょう。
本加算を実際に算定するために準備すべきこと
医療DX推進体制整備加算を算定するためには、主に4つの準備が必要です。どれか1つでも抜けてしまうと高い点数が算定できないため、以下より詳細をご確認ください。
1.電子処方箋への対応
電子処方箋は、従来の紙の処方箋を電子化し、医療機関から院外の保険薬局へ処方情報を送信するシステムです。電子処方箋に対応することで、高い点数が設定されている加算1~3を算定できます(未対応の場合は加算4~6が算定対象)。
導入にあたっては、電子カルテシステムの改修やスタッフへの操作研修など、計画的な進行が欠かせません。電子処方箋の詳細な導入手順については、「電子処方箋導入マニュアル」を用意しているため、以下より無料でダウンロードください。
ダウンロードはこちらから:【クリニック向け】電子処方箋導入マニュアル
2.マイナ保険証の推進
マイナ保険証の利用率によって加算点数が決まります。利用率が高いほど上位の加算を算定できるため、掲示や声掛けなど患者さんへの働きかけが重要です。環境としてはカードリーダーの設置が必要となり、2025年4月からはスマートフォンによる登録も可能になっています。
なお、カードリーダー導入に際しては、補助金制度が設けられています。導入費用の負担軽減や手続きの詳細については、医療機関等向け総合ポータルサイトで確認できます。
参考:医療機関等向け総合ポータルサイト「顔認証付きカードリーダーの増設支援について」
(https://iryohokenjyoho.service-now.com/csm?id=kb_article_view&sysparm_article=KB0011632)
3.電子カルテ情報共有サービスへの対応
電子カルテ情報共有サービスは、患者さんの診療情報を医療機関間で安全に共有できるシステムです。2025年9月末までの経過措置期間中に体制整備が求められており、2025年10月以降は本格的な運用が見込まれます。
電子カルテ情報共有サービスに関して、より詳しく知りたい場合は以下の記事も参考になさってください。
参考記事:【2025年度版】電子カルテ情報共有サービスの流れやメリットを解説
4.届出様式の提出
医療DX推進体制整備加算を算定するためには「基本診療料の施設基準等に係る届出書(別添7)」と「医療DX推進体制整備加算の施設基準に係る届出書添付書類(様式1の6)」の提出が必要です。書類は、医療機関が施設基準を満たしていることを証明するものであり、地方厚生局等への届出が求められます。
届出様式は各地方厚生局のホームページからダウンロード可能です。記入例や提出方法については、関東甲信越厚生局の基本診療料に関するページなどを参考になさってください。
参考:厚生労働省関東甲信越厚生局「基本診療料の届出一覧(令和6年度診療報酬改定)」
(https://kouseikyoku.mhlw.go.jp/kantoshinetsu/shinsei/shido_kansa/shitei_kijun/kihon_shinryo_r06.html)
医療DX推進体制整備加算についてよくある質問
医療DX推進体制整備加算についてよくある質問と回答をまとめました。適切な算定や準備の参考になさってください。
加算4~6から1~3へ変更する場合の届出直しは必要ですか?
はい、届出直しが必要です。
電子処方箋への対応が完了し上位の加算区分1~3へ変更する場合は、新たに届出書類を提出しましょう。
再診でも算定できますか?
いいえ、再診では算定できません。
医療DX推進体制整備加算は、初診料に対する加算として設定されています。また、月1回の算定上限も、あわせて確認しておくと査定防止につながります。
開院した初月から算定できますか?
いいえ、開院した初月からは算定できません。
その理由は、マイナ保険証の利用率通知が算定要件となっているためです。支払基金は、レセプト件数をベースにマイナ保険証の利用率を算出し、各医療機関に通知しています。よって、開院時点ではレセプト実績がないため、利用率の算出ができません。
なお、開院準備の段階で体制整備を完了させておくことで、通知到着後からスムーズに算定できます。
【まとめ】加速が見込まれる医療DXの対応は計画的に
医療DX推進体制整備加算は、医療DXの推進状況を評価する加算の1つです。2025年10月からは電子カルテ情報共有サービスへの対応が新たに求められ、より包括的な医療DXへの取り組みが必要となる見込みです。
現在算定できている医療機関はマイナ保険証の利用推進、これから算定する医療機関は施設基準を満たす環境整備から着手してみてはいかがでしょうか。
環境整備には、以下の製品・サービスが有効です。ぜひこの機会にご検討ください。
電子処方箋の導入についてはこちら↓
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