目次
メンタルヘルス研修とは
メンタルヘルス研修とは、こころの健康の重要性について学ぶための研修です。メンタルヘルスに関する全般的な知識や、メンタルヘルス不調のサイン・防止策などを中心に扱います。従業員のメンタルヘルス不調を早期に発見し、適切に対応できるようにすることが主な目的です。
また、研修を受けても実際の対応が難しいケースも想定されます。そのような場合に備え、人事部門や専門家への相談手順についても研修で取り上げます。
メンタルヘルス研修が必要な理由
メンタルヘルスに関する正しい知識がないと、身近にメンタルヘルス不調の従業員がいても、なかなか気づけません。たとえ異変に気づいたとしても、適切に対応できない場合が多いでしょう。
また、メンタルヘルスの不調が長期間続くと、うつ病や適応障害などの精神疾患を発症する可能性があります。重症化した場合には労災認定されるケースもあり、近年その件数は増加傾向です。
また、労働契約法第5条には、安全配慮義務が規定されています。企業として安全配慮義務を果たすためにはメンタルヘルス対策を実施しなければなりません。正しい知識を身につけるため、メンタルヘルス研修が必要です。
安全配慮義務について詳しくはこちらの記事もあわせてご覧ください。
関連記事:安全配慮義務とは?根拠となる法律や事例、取り組み方を解説
メンタルヘルス研修で取り扱うテーマ
メンタルヘルス研修を実施する際、どのようなテーマを取り上げるべきか迷うこともあるでしょう。ここでは、実際に多くの研修で扱われている主なテーマを紹介します。
メンタルヘルスの基礎と重要性
メンタルヘルスの基礎知識や、その重要性について学びます。主に「ストレスとは何か」「ストレスが心身に与える影響」「メンタルヘルス不調のリスク」などを中心に扱います。メンタルヘルスの問題は個人だけでなく、職場全体の生産性や雰囲気にも影響を及ぼすため、組織全体での理解が重要です。
また、関連する法律として「労働基準法」や「労働安全衛生法」、「過労死等防止対策推進法」などについても触れ、法的な背景を理解することも大切です。
メンタルヘルスの基礎について詳しくはこちらの記事もご覧ください。
関連記事:メンタルヘルスケアの基礎知識|4つのケアと3つの予防策
メンタルヘルスの不調に気づく方法
自分自身だけでなく、周囲の人や部下の変化にも気づく方法を学びます。例えば、コミュニケーションが減ったり、集中力が低下したりといった変化は、メンタルヘルス不調のサインであることが多いです。特に管理職は、部下の小さな変化に注意し、早期の発見や対処につなげることが求められます。
深刻な状況になる前に不調に気づき、適切なサポートや専門家への相談につなげることが重要です。
メンタルヘルスの不調への防止法
メンタルヘルスの不調の主な原因の一つはストレスです。ストレスへの対処法を学ぶことで、メンタルヘルスの不調防止につなげられます。ハラスメントの防止も重要なポイントです。あわせて、困難な状況でも前向きに対処できるメンタルタフネスの向上も取り上げます。
メンタルヘルスの不調者に対する対応法
すでにメンタルヘルスが悪化している従業員に対しては、上司や人事部門の担当者が適切に対処する必要があります。
管理職向け研修では、話の聞き方や接し方、必要に応じて医療機関の受診を勧める方法など、具体的な対応策を扱います。接し方次第で従業員の回復や悪化が左右されるため、非常に重要です。
メンタルヘルス研修を実施するメリット
メンタルヘルス研修を実施すれば、従業員個人にとっても組織全体にとっても大きなメリットがあります。では、具体的にどのようなメリットがあるのか見ていきましょう。
セルフケアができる
メンタルヘルス研修を受けることで、従業員はメンタルヘルスケアに関する知識を身につけられます。自分のメンタルヘルスが悪化してきたときに自分で気づき、セルフケア(例:休息、相談、リラクゼーションなど)ができるようになるのがメリットです。セルフケアができれば、深刻な状況にならずに済む可能性があります。
メンタルヘルスのセルフケアについて詳しくはこちらの記事もあわせてご覧ください。
関連記事:セルフケアとは?メンタルヘルスケアの重要性と推進のポイント
早期に対応できる
上司がメンタルヘルス研修で正しい知識を身につけていれば、部下の不調のサインに気づくことができます。メンタルヘルス不調の部下が放置されることを防止できるのも大きなメリットです。
また、メンタルヘルスの不調は放置すると、時間の経過とともにさらに悪化していきます。発見が遅れると、深刻な状況に陥っていることも少なくありません。上司が早期に発見し、適切に対処できるようになることが、メンタルヘルス研修の大きな利点です。
休職・退職を減らせる
メンタルヘルスが悪化し、深刻な状況になった従業員は休職に至ることがあります。しばらく休職しても回復が見込めなければ、そのまま退職してしまうケースもあるでしょう。
正しい知識を身につけて、メンタルヘルスの不調に早期に対応していれば、そこまで深刻な状況にならずに済むのがメリットです。休職や退職に至る従業員を減らすことができます。
また、従業員を大切にする企業というイメージも広まり、ブランディングの向上にも期待できます。
生産性が向上する
自分の能力を発揮できるかどうかは、メンタルヘルスの状態が強く影響します。能力の高い人でも、メンタルヘルスが悪化していると仕事のパフォーマンスが低下してしまいます。
従業員のメンタルヘルスが良好に保たれていれば、自分の能力を存分に発揮できるのがメリットです。前向きな気持ちになれるため、モチベーションや集中力も向上し、仕事のパフォーマンスが上がります。結果として、組織全体としての生産性も向上するでしょう。
メンタルヘルス研修を実施する上での注意点
メンタルヘルス研修は、実施方法によっては十分な効果が得られなかったり、場合によっては逆効果となってしまうこともあります。そうならないために、どのような点に注意すべきかを確認しましょう。
従業員のプライバシーに配慮する
講師の説明内容が、社内の特定の従業員を連想させてしまうことがあります。その場合、該当する従業員にとってはプライバシーが侵害され、かえってメンタルヘルスが悪化する可能性もあるため注意が必要です。
研修で扱う内容に、特定の従業員のプライバシーを侵害するような事例が含まれていないかどうか、事前にしっかり確認しましょう。特に具体例を挙げて説明する際は、細心の注意を払いましょう。
部署・役職別にカスタマイズする
従業員の所属する部署や役職によって、必要とされる知識や情報は異なります。従業員の場合はセルフケアを中心とした内容で十分ですが、管理職や人事部門の場合は、それだけでは不十分です。
全員に同じ内容の研修を実施するのではなく、部署や役職ごとに内容をカスタマイズすることが効果的です。管理職向け、人事部門向け、従業員向けと分けて実施することで、それぞれに必要な知識を身につけることができます。
メンタルヘルス研修の実施方法
メンタルヘルス研修の実施方法は、大きく対面とオンラインの2種類に分けられます。オンライン研修には、さらに録画型(オンデマンド型)とライブ配信型があり、自社に合った方法を選ぶことが大切です。ここでは、それぞれの実施方法の特徴を見ていきましょう。
対面研修
対面研修は、会場に集まって実施する方法です。講師と従業員が直接コミュニケーションを取りながら研修を進められます。意見交換やグループワークなど、受講者同士の交流機会が多い点が特徴です。講師がそばにいるため、集中力を保ちやすい点もメリットです。ただし、会場を用意する必要があるほか、参加者や講師のスケジュールを調整する必要もあります。特に多くの受講者が参加する場合は、日程の調整や会場の確保に手間がかかることもあります。
オンライン研修
オンライン研修は会場を用意する必要がありません。主に録画型とライブ配信型の2種類に分かれます。
録画型
録画型は、あらかじめ収録された講義映像を視聴する形式です。各従業員がPCやスマホを使い、それぞれの都合に合わせて好きなタイミングで視聴できるため、柔軟に受講できます。ただし、映像を見るだけなので、集中力が続きにくい場合もあります。
ライブ配信型
ライブ配信型もPCやスマホを使用して受講しますが、双方向のコミュニケーションが可能なのが特徴です。講師と受講者は別々の場所にいますが、対面に近い形で実施できます。対面研修ほどではありませんが、比較的集中しやすいのもメリットです。
ただし、ヘッドセットマイクやWebカメラなどの機材が必要です。また、いつでも実施できるわけではなく、講師のスケジュールによっては実施時期が調整される場合もあります。
メンタルヘルス研修をより効果的なものにするには
メンタルヘルス研修を実施するにはコストと時間がかかります。そのため、かけた時間とコストに見合う効果を得ることが重要です。ここでは、メンタルヘルス研修をより効果的にするためのポイントを紹介します。
目的を明確に理解してもらう
単に研修を実施して従業員に参加してもらうだけでは、目的意識が高まりにくく、受動的な姿勢になりがちです。その結果、十分な効果が得られないこともあります。
十分な効果を得るためには、メンタルヘルス研修の目的を従業員に明確に伝え、理解してもらうことが重要です。研修を実施する理由や期待する効果をしっかり説明することで、従業員も目的を理解し、主体的に取り組むようになります。
実践的な内容を取り入れる
研修を受講することで一定の知識は身につきますが、それだけでは十分な効果は得られません。知識を習得しても、実際の場面で活かせないことも多いものです。
習得した知識を実際に活かせるようにするためには、座学だけでなく実践的な内容も取り入れる必要があります。例えば、グループワークやロールプレイング、ケーススタディなどです。実践的なスキルが身につくだけでなく、当事者意識も高まります。
研修後のサポート体制を整える
メンタルヘルス研修で身につけた知識やスキルも、従業員が個人でできることには限界があります。特に社内の協力体制が整っていなければ、せっかくの知識も十分に活かせません。メンタルヘルス研修の実施とあわせて、サポート体制の整備も行いましょう。
例えば、定期的な情報共有の場を設けたり、相談できる窓口を整備したりすることが重要です。また、アンケートを実施して次回の研修に活かすなどの取り組みも効果的です。
専門機関に委託する
メンタルヘルス研修の講師は、専門知識を持つ人が担当する必要があります。しかし、社内に十分な専門知識を持つ人材がいるとは限りません。知識が不十分な人が講師を務めると、誤った内容を伝えてしまったり、内容が偏ってしまったりする可能性もあります。
そのため、社内に適任者がいない場合は、外部の専門機関に研修の実施を委託することも検討しましょう。そうすることで、人事部門の担当者の負担軽減にもつながります。
まとめ
メンタルヘルス研修は、従業員がメンタルヘルスの重要性を認識し、正しい知識を身につけるために必要です。主にメンタルヘルスの不調に気づく方法や、不調の防止方法、対処方法などについて学びます。
セルフケアや早期発見ができるようになることで、休職や退職を減らすことができ、生産性の向上も期待できます。組織全体にとって大きなメリットがあり、企業の長期的な成長のためにも、メンタルヘルス研修の実施をおすすめします。
また、メンタルヘルスの不調に早期に気づくにはストレスチェックが重要です。ストレスチェックを実施することで、自覚症状が現れる前の段階で不調を発見できます。
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