目次
健康経営銘柄とは
健康経営銘柄は、政府の日本再興戦略における「国民の健康寿命の延伸」に関する取り組みの一つとして、経済産業省と東京証券取引所が共同で運営する制度です。健康経営に対する企業の取り組みを促すために、東京証券取引所の上場企業の中から、原則として33業種ごとに1社が選出されます。
健康経営銘柄は、優れた健康経営を実践している企業を選定する制度の中でも、特に選ばれるのが難しい制度です。
「健康経営®」とは、従業員の健康管理を経営的な視点から考え、戦略的に実践する経営手法です。従業員の健康への投資が組織の活性化や生産性向上をもたらし、業績向上や企業価値向上につながるという考え方に基づいています。
関連記事:健康経営とは?メリットや取り組み方を解説
健康経営銘柄2025
健康経営銘柄2025は、2025年3月10日に選定結果が公表され、29業種から53社が選定されました。主な選定企業は以下のとおりです。
- SCSK:最多11回目の選定
- サッポロホールディングスほか15社:初選定
その他の選定企業は下記のリンクから一覧で確認できます。
出典:経済産業省ウェブサイト(https://www.meti.go.jp/press/2024/03/20250310004/20250310004.html)
健康経営優良法人認定との違い
健康経営銘柄に似た制度として「健康経営優良法人認定制度」があります。健康経営優良法人認定制度は、健康経営に力を入れている法人を日本健康会議(※)が認定する制度です。
健康経営優良法人認定制度には、大企業を対象とした「大規模法人部門」と、中小企業を対象とした「中小規模法人部門」があります。2025年度は、大規模法人部門で3,400法人、中小規模法人部門で19,796法人が認定されました。
健康経営銘柄は健康経営優良法人に認定された企業から選ばれるため、健康経営優良法人より選定のハードルが高くなります。健康経営銘柄に選定された企業は、トップランナーとして健康経営の普及に取り組むことも期待されています。
※日本健康会議は、国民の健康寿命の延伸と適正な医療の推進を目的に、民間組織などが連携して設立された官民連携の枠組みです。
ホワイト500やブライト500との違い
ホワイト500は、健康経営優良法人のうち、大規模法人部門に認定された企業の上位500社に与えられます。健康経営銘柄との比較を以下の表にまとめました。
比較項目 | ホワイト500 | 健康経営銘柄 |
---|---|---|
制度 | 健康経営優良法人 | 健康経営銘柄 |
対象企業 | 従業員数が一定数(業種ごとに異なる)以上の企業 | 東京証券取引所の上場企業 |
選定数 | 500社 | 原則1業種につき1社 |
選定・認定 | 日本健康会議 | 経済産業省 東京証券取引所 |
健康経営度調査の実施 | 必要 | 必要 |
ロゴの使用 | あり | あり |
「健康経営度調査」とは、企業の健康経営の取り組み状況と経年変化の分析を目的とした調査で、後述で詳しく解説します。また、ブライト500、ネクストブライト1000は中小規模法人部門に認定された企業のうち、それぞれ上位500社、上位501〜1,500社に付与される制度です。
関連記事:ホワイト500とは?認定要件や認定フロー・健康経営銘柄について解説
ブライト500とは?認定要件やメリット・ポイントを解説
健康経営銘柄の選定基準
提出された健康経営度調査の回答内容に基づき、健康経営銘柄の候補が選ばれます。主な選定基準は、以下のとおりです。
- 重大な法令違反等なし
- 健康経営優良法人(大規模法人部門)申請企業の上位500位以内
- ROE(自己資本利益率)の直近3年間平均が0%以上または直近3年連続で下降していない。ROEの高い企業には一定の加点
- 前年度回答有無、社外への情報開示および投資家との対話状況も評価対象とし、一定の加点
健康経営銘柄の選定の流れ
健康経営銘柄の選定は、健康経営優良法人の認定と重なる部分もありますが、全く同じではありません。以下の表で、健康経営銘柄選定の全体の流れとスケジュールを確認しましょう。
時期 | 健康経営銘柄 | 健康経営優良法人 (ホワイト500) |
---|---|---|
8月〜10月 | 健康経営度調査の実施 | |
10月〜11月 | 銘柄選定候補の選出 | 認定委員会の審議 |
11月〜2月 | 加点等の実施 | |
3月 | 選定 | 認定 |
①健康経営度調査の実施
健康経営銘柄に選ばれるには、健康経営度調査を実施し、申請を行います。健康経営銘柄2025の調査実施期間は、2024年8月19日〜10月11日まででした。
②銘柄選定候補の選出
提出された健康経営度調査の回答内容に基づき、健康経営銘柄の候補が選ばれます。選定候補となる要件は、以下のとおりです。
- 健康経営度の評価結果が上位500位以内
- 健康経営優良法人(大規模法人部門)に申請
- 東京証券取引所の上場企業(TOKYO PRO Market上場企業を除く)
健康経営銘柄2025は、2024年10〜11月に候補企業の選出が行われました。
③加点等の実施および企業の選出
健康経営銘柄の選定候補に選ばれた企業は、財務指標スクリーニングや健康経営度調査の内容に基づいて加点評価されます。ただし、労働関係法令の違反などがあった場合は、健康経営銘柄に選ばれません。選定された後も、虚偽の記載や法令違反が発覚すると認定が取り消される場合もあります。
健康経営銘柄に選出されるのは、東京証券取引所が定める33業種ごとに、原則として最高順位の1社です。業種内では最高順位でなくても、他の業種の最高順位企業の平均より評価が高い企業は、最大5枠まで追加で選定される場合があります。
健康経営銘柄2025は、2025年3月10日に選定企業が公表されました。
健康経営度調査とは
健康経営度調査は健康経営銘柄やホワイト500の選定、健康経営優良法人(大規模法人部門)の認定を受けるために実施が必要となる調査です。調査項目が健康経営を始める際のポイントや、具体的な実施手順がわかる内容となっているため、企業が初めて健康経営に取り組む場合にも役立ちます。
本調査に回答すると、取り組み状況に関するフィードバックも受けられるため、今後の健康経営に関する取り組みにも生かせるでしょう。
健康経営度調査の回答方法やスケジュールは「「ACTION!健康経営」健康経営優良法人認定事務局(日本経済新聞社)」から確認できます。詳細は下記の関連記事をご確認ください。
調査項目
健康経営度調査では、ホワイト500と同様に大きく分けて次の5つの項目を調査します。
調査項目 | 評価内容 |
---|---|
経営理念 | 健康経営を推進する目的・体制の整備 社内外への公表の有無 |
組織体制 | 健康経営を全社的に推進する体制の整備 |
制度・施策実行 | 従業員の健康課題の把握と対策 健康経営の土台づくり 従業員の健康づくりの対策 |
評価・改善 | 実施した施策の効果と改善策の検証 |
法令遵守・リスクマネジメント | 自己申告形式で違反等がないことを誓約 |
詳細は下記の関連記事をご参照ください。
2025年度の改訂ポイント
健康経営度調査は毎年調査項目が改訂されています。2025年度の改訂ポイントは以下の3点です。
健康経営の可視化と質向上
健康経営の可視化と質向上は、以下の4点が改正されました。
- PHR(※)を活用しやすい環境の整備に関する設問の追加(評価対象外)
- 健保組合など、保険者に対する40歳未満従業員の健診データの提供を加点対象に追加
- 健康経営の意義や質の向上を意識させるために、健康経営の推進やアウトプット指標に関する設問の配点が高まるよう、全体の配点バランスを調整
- 事由を問わない在宅勤務やテレワークの導入状況、通院等のための特別休暇制度への加点
※Personal Health Recordの略で、健康に関する個人の保健医療情報を指します。
新たなマーケットの創出
新たなマーケットの創出では、グローバル規模の健康経営の推進を把握するため、健康経営に注力している国と実施方針、取り組み内容に関する質問が追加されました。
グローバル展開していない企業を考慮し、2025年は配点対象には含まれていません。
健康経営の社会への浸透・定着
健康経営の社会への浸透・定着で改正された内容は、以下のとおりです。
- 両立支援の取り組みを促すため、介護と育児の設問を分離
- 常時使用しない従業員や派遣社員に対する健康施策の実施が評価対象
- プレコンセプションケア(※)に関する取り組みが、アンケートとして追加
※プレコンセプションケアは、男女ともに性や妊娠に関する正しい知識を身につけ、健康管理を行うよう促すことを指します。
健康経営銘柄に選ばれるメリット
健康経営銘柄に選定されると、企業にとって多くのメリットがあります。代表的な以下の3つのメリットを見ていきましょう。
- 従業員の健康促進と生産性向上
- 企業イメージの向上と人材確保
- ステークホルダーからの評価向上
従業員の健康促進と生産性向上
健康経営銘柄に選ばれるには、従業員の健康づくり促進のための組織体制の整備や、具体的な取り組みが必要です。取り組みを進めることで、以下のような効果が見込まれるでしょう。
取り組み例 | 期待される効果 |
---|---|
健康診断の受診率向上 | 従業員の健康状態悪化の予防 など |
メンタルヘルス対策 | 精神疾患による休職防止 など |
残業時間の削減 | 過労による業務効率低下の防止 など |
従業員が健康に働ける環境が整えば、結果的に生産性が向上し、企業の業績にもプラスに働きます。
企業イメージの向上と人材確保
健康経営銘柄に選定されると、企業のイメージ向上やブランディングに有効です。健康経営銘柄の認定ロゴマークを使用すると、取引先や金融機関、一般消費者に対して、従業員の健康を重視している姿勢をアピールできます。
また、健康経営銘柄は、人材の採用や定着でもメリットがあります。日経新聞社が2023年に行った「働き方に関するアンケート」によると、就活生や転職者の約6割が、健康経営が就職先の決め手になると回答しており、注目度が高いといえるでしょう。さらに、経済産業省の調査によると、健康経営銘柄に選出された企業の離職率は全国平均より低くなっており、離職抑制の効果も期待できます。
ステークホルダーからの評価向上
近年、2015年に国連で採択されたSDGs(持続可能な開発目標)への関心が世界的に高まっています。SDGsは「誰一人取り残さない」理念のもと、世界の貧困をなくし、持続可能な世界の実現を目指す国際目標です。
この流れを受けて注目を集めているのがESG投資です。ESG投資とは、企業の財務情報のみならず、以下の3点の取り組みを重視した投資手法を指します。
- Environment:環境
- Social:社会
- Governance:ガバナンス、企業統治
健康経営に取り組み、従業員の健康づくりに貢献すると、SDGsの実現やESG投資を重視する投資家から評価を得られます。投資対象としての企業の魅力が増し、資金調達の円滑化が見込まれるでしょう。
まとめ
健康経営銘柄は、東京証券取引所の上場企業のうち、優れた健康経営を実施している企業を選定する制度です。健康経営銘柄に選定される要件や基準が高い分、選定されれば多くのメリットが期待できるでしょう。
健康経営への取り組みは長期的には重要である一方、緊急性が低く、後回しにされがちです。その結果、健康経営に関する業務を十分に実施できず、健康経営銘柄の認定要件を満たせなくなる恐れがあります。健康経営銘柄の認定取得を目指すには業務の効率化が欠かせません。
ウィーメックスは、健康診断やストレスチェックの実施・管理、結果の分析などを効率化するソリューションを提供しています。健康経営の推進に向けて、ぜひ導入をご検討ください。
出典:経済産業省ウェブサイト(https://www.meti.go.jp/press/2024/03/20250310004/20250310004.html)
経済産業省ウェブサイト(https://www.meti.go.jp/press/2024/03/20250310005/20250310005.html)
経済産業省ウェブサイト(https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/downloadfiles/meigara2025sentei_flow_.pdf)
経済産業省ウェブサイト(https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/kenko_iryo/kenko_toshi/pdf/012_02_00.pdf)
経済産業省ウェブサイト(https://www.kyoukaikenpo.or.jp/~/media/Files/kagawa/kenpoiin/202409keisankyoku.pdf)
「ACTION!健康経営」健康経営優良法人認定事務局(日本経済新聞社)(https://kenko-keiei.jp/)
※「健康経営®」は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。